税務個別論点

役員給与

役員給与について

ポイント

・役員給与には主に定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与に分類されます。

役員給与は、取締役に対して支払う給与をいいます。

役員給与は、会計上は支払った又はその期に支払う予定金額を損益計算書又は貸借対照表に計上すれば済むため、会計上において論点はほとんどありません。

しかし、法人税法上は役員給与の損金計上に対して、厳密に制限をしています。

法人税法上、役員給与の損金計上について制限を行っているのは、いわゆるおてもりの弊害を避けるためと言われています。

すなわち、仮に役員がお手盛りにより決算期の利益を自由に役員給与(賞与を含む)を損金処理してしまうと、税金計算の基礎となる課税所得の減少につながり、当局としては課税ができないという弊害が出てしまいます。

もちろん、役員給与として支給しても、所得税で一定の税金は回収できますが、役員給与を自由に損金経理できてしまうと役員等の経営者が法人税と所得税の税率のうち、安いほう選ぶ等の利益操作が出てきてしまうという点で問題が生じます。

このため、法人税法上においては、役員給与を以下のように分類し、それぞれの類型にあてはまらないものについては、一部ではなくその全額を損金として認めないという厳しい規定を定めているため、役員の方々は留意が必要となります。

ポイント

・役員給与は主に定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与があります。このうち、業績連動給与は、上場企業のみ適用される。

【役員給与の種類】

種類 内容
定期同額給与 1月以下の一定期間ごとの給与で、かつその事業年度の各支給時期における支給額が同額であること
事前確定届出給与 事前確定届出給与は、定期同額給与と業績連動給与いずれにも該当しない役員給与
業績連動給与 役員給与のうち一定の業績連動給与に該当するもの

上記の他、退職給与等も役員給与の1つとして類型されますが、ここでは割愛します。

 

定期同額給与

定期同額給与は、毎月支払われる月給をイメージしてもらえばわかりやすいかと思います。

定期同額給与は毎月の給与の支払分については、法人税法上も損金として認めているというものです。

例えば、2023年度の月額給与は30万円にすると株主総会等で決定し、2021年度中その金額を毎月支払いを行った場合、法人税法上も損金として認められる。

但し、その事業年度の各支給時期のおける支給額が同額であることが求められています。

このため、4月は30万円支給し、業績が良かったので5月は50万円にするといったようなことをすると定期同額給与に該当しないこととなり、法人税法上は5月の50万だけでなく、4月の30万も含め全額損金として認められないことになる点、留意が必要です。

 

事前確定届出給与

事前確定届出給与は、定期同額給与と業績連動給与いずれにも該当しない役員給与をいいます。

事前確定届出給与は、原則として事業年度の開始の一定の日までに、役員給与に関する事前確定届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

事前確定届出給与は簡単に言うと事前確定届出書において、例えば9月末と12月末にそれぞれ50万円を支給すると事前に届出を行い、実際にその支給を行った場合、その役員報酬を損金として認められる制度です。

なんだ、簡単じゃないかと思った方もおられるかもしませんが、この事前確定届出給与に関しては、事前に届出した通りに支給しなければ、その全額が損金として認められないという制度であります。

例えば上記例の通り、事前確定届出書において、9月と12月にそれぞれ50万円を支給すると事前に届出を行ったとします。

その後、9月に実際に50万円の支給したものの、12月には諸般の事情によりの25万円だけを支給したとします。

この場合、9月支給の50万と12月支給の25万は損金として認められそうなものなのですが…。

事前確定届出給与の制度趣旨であるお手盛り防止に鑑みると、事前確定届出通りになされなかったその支給額すべてが法人税法上損金として認められないことなります。

すなわち、12月については25万円が損金として認められないだけでなく、9月支給の50万円に関しても損金として認められないということになります。

もちろん、業績悪化を原因として場合、一定の手続きを実施し、それが所轄税務署長に認められれば、事前確定届出給与の額を変更すること可能ですが、いずれにしても、非常に厳しい制度設計となっている点、留意が必要です。

なお、事前確定届出給与を採用する場合には、税理士に事前にご相談することをお勧めします。

 

業績連動給与

業績連動給与は、役員給与のうち一定の業績連動給与に該当するものは、法人税法上において損金にすることが認められています。

業績連動給与の対象は、上場企業等を想定して整理された規程であり、要件としては算定方法が業績連動指標に基づく客観的なものであること報酬委員会等の決定等がなされていること、算定方法を有価証券報告書等で開示していること等の要件を満たす必要があります。

なお、上記の通り上場企業を想定したものであり、利用できる会社は限定されている点、留意が必要となります。

上記に該当する場合でも、当局が不相当に高額であると判断された場合には、損金不算入とされる可能性がある点、留意が必要となります。

 

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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