会計個別論点

【組織再編】M&Aと組織再編(M&Aはどのようなもので、どのような目的で行われるか?)


M&Aはどんなもの?

ポイント

・貸借対照表の概要を理解

M&Aの概要について理解する
・組織再編の種類について理解する

 

 

近年、ネット、新聞、テレビの経済ニュースでM&Aという言葉を多く耳にするようになりました。M&Aの仲介を行う会社のCMさえ流されています。

またM&Aの仲介を行っている会社は年収の上位ランキングでも常連として出てきている状況です。では、M&Aとはいったいどのようなものなのでしょうか。

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略となりますが、2つ以上の会社が1つになる合併や他の会社を買収したりすることを指した言葉となります。

M&Aの目的は様々ですが、会社を買収する側の目的の1つとして時間を買えるメリットがあります。

例えば、A社が新たにパン事業を実態したいと考えました。しかし、A社は過去にパン事業を実施したことがなかったため、店の場所、商品内容、集客等を含め一から事業を構築しなければなりませんでした。

一方でB社の社長は創業よりパン事業を行っていましたが、後継者がいないこともあり会社を清算することを考えていました。

B社が会社を清算するという話を仲介会社経由で話を聞いたA社は、B社社長が保有する株式を買い取ることを提案し、B社社長は了承したことにより、A社がB社を買収することができました。

この買収によりA社は、B社が既に展開している店舗を使用できたことにより、既にB社が運営するパン屋についた顧客込みでお店を買収することが、店の開店から集客等を含め事業展開の時間を省略することができました。これがM&Aのメリットの1つとなります。

デメリットとしては、B社が過去に粉飾をしていた場合の損害によりA社の株式の買取価額以上の利益が得られないリスクが存在するという点にあります。

例えば、B社の社長は個人的なつながりのあるC社の社長に頼まれて、C社が行う借入に対してB社として保証を行っていたとします。A社はそのような事実を知らずA社を買収し、B社が展開していたパン屋を順調に運営していたとろ、しばらくたってから取引のない銀行よりC社が倒産しためC社が行っていた借入金に係る保証をB社が行わなければならないという事実が発生したとします。そのような場合、B社としてC社の保証を行わなければならず、下手をすればB社も倒産してしまいかねません。もちろん、この際A社は、元B社社長に対して、契約当初そんな話は聞いていなかったという主張はできますが、元B社の社長にC社の借入金を全て支払う資金がない可能性もあります。

このようにメリット・デメリットがあることを認識しながら、M&Aは慎重に行なわければなりません。

そのほかにもM&Aのメリット、デメリットは他にいくつかありますが、ここでは割愛させて頂きます。

余談となりますが、中小企業については、適正な企業会計の基準に基づき会計処理がなされていないことが多いため、リスクが潜在している可能性があり、買収後思わぬところにリスクがありその顕在化により多額の損失を負うということがあり得ます。

このため、M&Aを実施する際は、弁護士、公認会計士、及び税理士等の専門家に基づく適切な調査(「ディーデリジェンスや略してDD(ディーディ)」といったりします。)を行うことをお勧めします。

上記のM&Aの例は、B社の経営者が保有する株式を直接買い取るという手法を取りましたが、B社よりパン事業を引き継ぐ方法には他にもいくつか存在します。

その手法のうち、会社を合併したり分割したり等の会社の形状を変えて取得する方法を「組織再編」といいます。

この「組織再編」については、分類の考え方はいくつかありますが、大きく以下のようなに分類されます。

 

まずは、組織再編に大分類として5つあることを理解して頂ければと思います。以下、それぞれ簡単に定義を記載させて頂きます。

合併とは、別々の法人が1つの法人に合体する組織再編をいいます(詳細はこちら)。

会社分割とは、法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を他の法人に承継させる組織再編をいいます(詳細はこちら)。

株式交換とは、法人がその発行済株式の全部を他の法人に取得させる組織再編をいいます。

株式移転とは、法人がその発行済株式の全部を新設する法人に取得させる組織再編をいいます。

事業譲渡とは、法人がその事業の経営権を売買する取引で、その対価は金銭に限られます。

どの手法を用いるかについては、買収対象とする資産や、買い手側、売り手側の要望等に決定されます。

但し、買い手側、売り手側のそれぞれに言えることは、上記の組織再編のメリット、デメリットをきちんと理解したうえで適用する手法を決定しなければ、短期又は長期的に大きく損をする可能性があるため、慎重に実施する必要があります。このため、上述の通り、弁護士、公認会計士、及び税理士等の専門家に相談することを強くお勧めします。

なお、弁護士、公認会計士、及び税理士等の専門家のなかでも、合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡等の組織再編を経験し、適切なアドバイスができる専門家は全体の中でもそれほど多くはありませんので、その専門家選定の段階から慎重に行わなければならない点、留意が必要となります。

 

まとめ

① M&Aの目的の1つとして時間を買えるメリットがあるが、一方で買収会社になんらかの隠れ債務等があり、買収会社がその債務を背負わなければならないという潜在するリスクもある

② M&Aの手法として大きく5つ(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)があるが、その目的とリスクに応じて選択する必要がある。

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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