日商簿記3級

【日商簿記3級⑩】手形①

手形

今回は、手形について学んでいきます。

簿記を勉強したことがあるなか方には、手形に関する仕訳を苦手にする方もいるかもしれません。簿記を勉強するなかでも、理解するのが難しい箇所の1つかと思います。私も簿記を勉強始めた当初は、全く理解できませんでした。

理解ができない原因は実物を見たことがなく、イメージしにくいということにつきると思います。

手形については経理・財務の方でない限り、実物を見ることないですし、経理・財務の方でさえも手形の取り扱いをしていないといった会社があるため見たことがないという方もいらっしゃるかと思います。

私もこの電子化が進んだ現代において、手形なんて本当に使っているのかとも思っていましたが、使ってました…。すべての会社ではないものの、一部の上場会社でさえ実際に使用していました。

このため、手形はあなどるなかれです。

手形は、通常支払期日が買掛金と比較して長い傾向にあります。例えば、買掛金が末締め翌月払いが多いのに対して、手形は3ヵ月から6か月程度のものが多いです。

手形を発行する理由は、資金繰りによるものがほとんどです。すなわち、支払いが遅くなることによりその分会社のお金がその期間出ていかなくて済むため、銀行からの借入等をしなくても済むといったことも会社は手形を使用します。

手形には、約束手形と為替手形があります。それぞれ確認していきましょう。

 

約束手形

約束手形とは、手形の振出人(支払人)が、手形を受け取った受取人に対して、手形に記載された所定の期日に決められた金額の支払いを約束する証券をいいます。

ちょっとよくわからないですよね。

でも、大丈夫です。以下で一緒に理解していきましょう。

まず約束手形とはどういうものかをみていきましょう。以下は約束手形の例示となります。

【約束手形】

上記の通り、約束手形という名前がついた紙切れとなります。現金で学んだ小切手との同じく、銀行で受け取ることが一般的ですが、小切手の違いは、受取人の名前が記載されていること、支払期日が決められているという点で異なります。

商品の仕入を行った際に、この手形をお金の代わりに振り出すこととなります。

例えば、A社がB社より商品の仕入れを行い、その対価として約束手形を振り出した場合は以下のような流れとなります。

なお、上記の通り銀行を経由して支払うことが通常ですが、便器的に直接払うものとして表現しています。

簿記においては、以下の理解で十分となります。

 

 

 

では、もう少し具体的にみていきましょう。

(例題1)A社は、B社から商品150円を仕入れし、支払として全額約束手形を振り出した。

なお、支払手形の支払期日は3ヵ月後とします。

 

 

【解説】

それでは上記の仕訳の解説をします。

ここで思い出していただきたいのが以下の表です。

 

 

約束手形と後で説明する為替手形(支払人である場合に限る)については、いずれも支払手形という勘定科目を使用します。

支払手形は、将来にお金を払うことにより資産が減少することから、負債に該当します。

支払手形=負債と抑えてください。

 

 

でもこれだと借方=貸方となっていませんね。

簿記は必ず借方=貸方の金額が一致しますので、これだけでは解答として誤りということなります。

このため、借方科目にも記載が必要となります。

今回は、商品の仕入を行っていますので、仕入勘定を使用します。

仕入は費用となりますので費用を増加させるため、借方科目に記載します。

 

 

これで仕訳は完成です。

なお、支払手形は負債勘定となり、いずれは支払わなければならないものとなります。

本例では、3ヵ月後支払うこととなりますので、支払手形の支払い時には、以下の仕訳が記載されることとなります。

 

 

上記は商品の仕入側、すなわち手形の支払側の仕訳となりますが、商品の販売側、すなわち手形の受取側の仕訳はどうなるでしょうか。

約束手形を受け取った場合、受取手形という勘定科目を使用します。

 

為替手形

為替手形とは、手形の振出人(発行者)が、第三者(支払人)に委託し、受取人またはその指図人に対して一定の金額を支払ってもらう形式の証券のことをいいます。

ちょっとよくわからないですよね。

でも、大丈夫です。以下で一緒に理解していきましょう。

まず為替手形とはどういうものかをみていきましょう。以下は為替手形の例示となります。

 

【為替手形】

 

為替手形は、通常登場人物が3者出てくるため少しややこしく感じるかもしれませんが、誰が何をしているかさえ理解してしまえば、それほど、難しくはありません。

覚えるというよりは、まずは理解に努めてみてください。

 

以下はすべてA社を主として記載しています。

①A社は、B社へ商品を100円で掛け取引で販売しました。このため、A社はB社に対して売掛金100円を持っており、B社としてはA社へ買掛金100円を保有している状態となっています。

②A社は、C社から商品100円を掛けで仕入れました。

③A社はC社への買掛金の支払いのため、C社を手形代金の受取人(指図人といいます)、B社を手形代金の引受人(名宛人といいます)とする為替手形を振り出しました(なおA社は振出人といいます)。

④B社は為替手形の期日が到来したため、C社へ代金100円を支払った。

 

為替手形の振出から支払の流れを図式化すると以下の通りとなります。

 

 

為替手形が難しく感じる理由は、上記の通り手形になじみがないことに加えて登場人物が多いこと、さらには振出人、指図人、名宛人という聞きなれない言葉が使われているということかと考えています。

振出人、指図人、名宛人についてもう一度整理してみましょう。

振出人:為替手形を振り出し人(いいかえると為替手形を発行した人)

名宛人:振出人の依頼に基づき、為替手形に記載の金額を支払う人

指図人:為替手形に基づきお金を受け取る人

少しは理解が進みましたでしょうか。

それでは、具体的な仕訳をみていきましょう。

(例題2-1)A社は、仕入先であるB社への支払いのために、B社を指図人、かねてより売掛金のあるC社を名宛人とする為替手形100円を振り出し、C社の引き受けを得て、B社に渡した。

【解説】

それでは上記の仕訳の解説をします。

A社は、C社への支払いのために、為替手形を振出(発行)しています。

A社にとっては、為替手形の振出により、仕入先であるC社への買掛金が減少することとなります。

このため以下の通り、借方科目に買掛金を記載し、負債を減少させます。

 

 

一方で、A社は買掛金の対価としてB社への売掛金をもとに為替手形の振出(発行)を行っています。

このため、以下の通り、貸方科目に売掛金を記載し、資産を減少させてます。

 

上記の結果、A社としては販売先であるB社の売掛金と、仕入先であるC社の買掛金をそれぞれ相殺するということになります。

これが、為替手形の振出人の仕訳となります。

なお、為替手形の期日が到来した場合、以下の通り仕訳なしということになります。

なぜ仕訳なしになるかというと、B社(引受人=支払人)からC社(受取人)への支払いは、B社とC社との間の取引であることから、A社にとっては、なんら取引は発生しないことになるため、A社は「仕訳なし」となります。

続いて、B社及びC社の仕訳についても見ていくことをしましょう。

 

(例題2-2)B社は、かねてより買掛金のあるA社から、A社が振り出し、B社が名宛人、C社を指図人とする為替手形100円の呈示を受け、これを引き受けた。

 

 

B社は、為替手形の引き受けを行っていますので、A社に対する買掛金を減少させる一方で、C社の為替手形の支払義務が発生するため、借方科目に買掛金を記載することによって負債を減少させる一方で、貸方科目に支払手形を記載することによって負債を同額増加させています。

 

C社はA社に対する売掛金の対価として、為替手形を受け取っていますので、C社がA社に対する売掛金を減少させる一方で、C社は為替手形を受け取っていますので、借方科目に受取手形を記載することによって資産を増加させる一方で、貸方科目に売掛金を記載することによって資産を同額減少させています。

なお為替手形の支払期日における仕訳は以下の通りです。

 

為替手形では、振出人、名宛人(支払人)、指図人(受取人)の3者があり、どの立場かを確認するようにしてください。

 

まとめ

1.約束手形は負債に該当し、支払手形勘定を使用します。

2.為替手形は、振出人、名宛人(支払人)、指図人(受取人)の3者があり、立場により処理が変わります

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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