グループ通算制度とは
グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い、その中で損益通算等の調整を行う制度です。
もう少しくだけた言い方をすると企業グループ全体で利益(課税所得がプラス)を出している会社と損失(課税所得がマイナス)を出している会社を合算したうえで法人税を計算することができる制度です。
グループ通算制度の前身として連結納税制度がありますが連結納税制度との違いは、グループ通算制度は後発的に修更正事由が生じた場合に、原則として他の法人の税額に反映させてない(遮断する)仕組みとされており、また、グループ通算制度の開始・加入時の時価評価課税及び欠損金の持込み等について組織再編税制と整合性の取れた制度とされています。すなわち、グループ通算制度の前身である連結納税制度では、仮に連結納税制度を採用しているA社とその100%子会社であるB社のうちB社の課税所得の税金計算を修正した場合、連結グループのA社の課税所得の計算をやりなさなければならず、非常に使い勝手が悪いと言われていましたが、グループ通算制度では原則として他の法人の税額に反映させてない(遮断する)仕組みとしています。また、合併、会社分割、現物出資、現物分配、株式移転、株式交換等を定めた組織再編税制における時価評価課税及び欠損金の持込み等の規定と、グループ通算制度における時価評価課税及び欠損金の持込み等の規定の整合性も取っているものとなっています。
以下は、グループ通算制度を採用している場合とグループ通算制度を採用していない場合の企業グループにおける法人税の負担額を計算したものとなります。
【前提】
親会社と子会社1の2社のみの企業グループを前提とします。
親会社の課税所得は「100」、子会社1の課税所得は「▲50」を前提とします。
法人税率は20%を前提とし、住民税、事業税等は考慮外としています。
上表の通り、グループ通算制度を採用していない企業グループの法人税負担額合計は▲20であるのに対して、グループ通算制度を採用している企業グループの法人税負担額合計は▲10となっており、グループ通算制度を採用している企業グループの法人税負担額は、少なくなっています。このようにグループ通算制度を採用することにより、企業グループ内の課税所得を損益通算を通じて相殺することができ、企業グループにおける法人税負担額を少なくすることができます。
なお、グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
どんな会社がグループ通算制度を適用できるの?
グループ通算制度の概要がどういったものかわかったところで、次に適用できる法人について把握していきましょう。
■適用法人
グループ通算制度の適用を受けようとする場合には、「内国法人及びその内国法人との間にその内国法人による適用対象となる法人は、下記(1)の親法人及びその親法人との間にその親法人による完全支配関係がある下記(2)の子法人に限られます(法法64の9①)。
(1) 親法人
普通法人又は協同組合等のうち、次の①から⑥までの法人及び⑥に類する一定の法人のいずれにも該当しない法人をいいます。
①清算中の法人
②普通法人(外国法人を除きます。)又は協同組合等との間にその普通法人又は協同組合等による完全支配関係がある法人
③通算承認の取りやめの承認を受けた法人でその承認日の属する事業年度終了後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
④青色申告の承認の取消通知を受けた法人でその通知後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
⑤青色申告の取りやめの届出書を提出した法人でその提出後1年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
⑥投資法人
⑦特定目的会社
⑧その他一定の法人(普通法人以外の法人、破産手続開始の決定を受けた法人等)
(2)子法人
親法人との間にその親法人による完全支配関係がある他の内国法人のうち上記(1)③から⑧までの法人以外の法人をいいます。
(出典:国税庁公表_グループ通算制度に関するQ&Aを一部加筆)
導入メリット,・デメリットは?
グループ通算制度は、企業グループ内
法人税を抑えることができる可能性がある(一定の制限はあるものの、赤字と黒字の会社の所得を相殺でき、その分法人税の支払額が減る)。
試験研究費等の控除額をグループ通算制度適用会社全体で考えるため、控除額が大きくなる可能性がある。
etc.
申告方法
(1)個別申告方式であることから、納税地は、各適用法人の本店所在地となります。
(2)適用法人に電子申告義務を課しています。
(3)子法人の申告書については、親法人の電子署名により、一括して提出できます。
まとめ
①グループ通算制度は、連結納税制度と同様にグループ間において、損益を相殺できる制度です。
②グループ通算制度の適用が受けれる子会社は、その親法人による完全支配関係がある限定(一部除外対象あり)
③グループ通算制度は、法人税を抑えることができる等のメリットがある反面、事務負担が増える等のデメリットもある