日商簿記3級

【日商簿記3級⑤】決算書作成までの流れ(重要)

簿記の最終目的

【日商簿記3級③】貸借対照表、損益計算書の内容を理解する」にて貸借対照表及び損益計算の内容について少し理解が進んだことかと思います。また、「【日商簿記3級④】簿記のルール」にて簿記における仕訳のルールを確認していただかことかと思います。

簿記を実施する最終的な目的は貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を作成し、投資家等を含めた利害関係者に情報を提供することにあります。

少し難しい表現をしてしまいましたが、ここで抑えていただきたいのが、簿記の最終目的は貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を作成することです。

この目的を達成するために、色々な帳票と呼ばれる記録するための帳簿(簿記で使用するノートみたいなものをイメージしていただければと思います)が出てきます。

この帳票が、簿記の勉強をしたことない方にはなじみがないため、簿記を勉強するうえで1つの壁になっているのだと考えています。

ただ、先ほども申し上げた通り、最終目的は貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を作成することですので、その目的を達成するために、この帳票はどの位置付けにあるのかを理解してしまえば、帳票は単なる記録簿なので、それさえ理解してしまえば大丈夫です。段階を踏んで勉強をしていきましょう。

 

決算書作成までの流れ

それでは、貸借対照表、損益計算書がどのような流れで作成されるかを見ていきましょう。以下、貸借対照表、損益計算書作成までの概略図となります。

この流れを理解しているかどうかで、今後の簿記の勉強への理解度が大きく変わってきます。このため、すべての簿記を勉強している方に以下の流れは、ぜひとも事前に理解していただきたい点となります。

 

 

 

会社が業者からお客さんにものを売るために業者からものを購入することを仕入といいますが、仕入等の経済活動を行うと通常なんらかの取引が発生し、それに伴い「①仕訳」が必要となります。

その仕訳は、「②仕訳帳」に記録することになります。

「②仕訳帳」の記録は、日付ごとに並んでいるものなので例えば現金といった種類ごとにまとめた帳票である「③総勘定元帳」にもう一度別の形式で記載(帳簿から別の帳簿に記載することを転記といいます。)します。

なお、現金や商品といった名称を簿記では勘定科目といいます。このあとに具体的に見ていくので、現状は総称を勘定科目というくらいの理解で大丈夫です。

ここで1つ疑問がわく方がいらっしゃるかと思います。『なぜ「②仕訳帳」に記載したのに、「③総勘定元帳」にまた転記する必要があるの?』という点です。

「②仕訳帳」は、基本的には①仕訳を日付ごとに並べた単なるメモのようなものです。このため、例えば会社が月末時点でいくら仕入を行ったかを即時に確認することは困難となります。

そこで、もう少し見やすいように工夫した帳簿が総勘定元帳となります。具体的には、仕入等の勘定科目ごとにまとめた表となります。イメージとしては、②仕訳帳がメモで、③総勘定元帳がまとめた表といったところでしょうか。実務上でも現金残高や増減要因を把握するために「③総勘定元帳」を頻繁に使用します。「②仕訳帳」は、個別の仕訳を把握するのには便利なのですが、まとまりがないので全体を把握するのは不向きとなります。このため、少し面倒なのですが「②仕訳帳」から「③総勘定元帳」に転記するという作業が必要となります。

また、「②仕訳帳」、「③総勘定元帳」の他に重要な現金、仕入等の科目を対象にさらに詳細に記載した「④補助元帳」があります。

ここでまた、疑問がわく方がいらっしゃるかと思います。『「②仕訳帳」、「③総勘定元帳」の他に、なぜ「④補助元帳」を作成しないといけいないの?』という点です。

「④補助簿」は、現金の詳細な出入りや、仕入先ごとに把握するために作成するものです。「②仕訳帳」、「③総勘定元帳」を主要簿ということがあります。

なお、補助簿は実務的に作成したり、作成しなかったりと会社によって異なります。あくまでも補助的な位置づけということを認識していただければ大丈夫です。

また、補助簿の種類には、現金出納帳、当座預金出納帳、小口現金出納帳、仕入帳、売上帳、受取手形記入帳、支払手形帳等、色々とありますが名前は覚えなくてよいと考えています。

補助簿の種類は、多いわりに帳票自体の重要性一部を除いて高くありません。この補助簿をすべて覚えないと思って簿記に嫌気が指すぐらいなら、受け流してもらっても大丈夫です。どちらかというと、補助簿には、必ず「現金出納帳」や「売上元帳」といったようにその勘定科目名が付されているので、その勘定科目の内容を理解することを優先していただければと考えています。

もう少し具体的に見ていきましょう。なお、個別の仕訳については、別途詳細に解説しますので、今は全体の流れを確認にする努めてください。

例えば、仮にあなたが電気屋の経営者だったします。あなたは経営者として以下の取引を行ったとします。

【取引内容】

a. 202●年4月1日にあなたのお店で販売するために仕入業者A社からテレビを30,000円で仕入れて、掛け取引(お互いにまとめて翌月末等決められた日に支払う約束する取引を掛け(かけ)取引という。)としました。

b. 202●年6月20日に仕入れたテレビをB得意先へ50,000円で販売し、同額の現金を受け取りました。

上記の取引について、まず「①仕訳」を考えてみましょう。

 

①仕訳

①仕訳

仕訳は上記のようになります。

仕訳の記載方法については、別途「簿記のルール」で記載をさせて頂きますので、ここでは仕訳ってこんな風に書くんだとか、そんな仕訳になるんだ程度の理解で大丈夫です。むしろ前述の通り、全体理解に努めていただければと思います。

仕訳が出来上がりましたので、今度は仕訳を「②仕訳帳」に記入していきましょう。

 

②仕訳帳

②仕訳帳

 

 

上記のように「②仕訳帳」を記入します。年月日まず日付を記入しますが、記入した日を記載するのではなく、取引が発生した日を記入することになります。取引「a.」場合、202●年4月1日に取引発生していますので、当該日付を記入します。次に、摘要には仕訳とその取引内容を記載することなります。今回は仕入業者A社からテレビを仕入れて、掛け取引(お互いにまとめて翌月に支払う約束)30,000円を行っていますので、「仕入」を左側に記入し、「買掛金」を右側に記入します。取引内容の概要を今回は「A会社より商品の仕入」としました。この内容は決まりはなく、内容がわかるように記載するということが基本となります。間違ってお覚えないでください。ここは、単なるメモです。また、金額についても「仕入」に対応した「30,000」と「買掛金」に対応した「30,000」をそれぞれ借方と貸方覧に記載します。

また取引「b.」場合、202●年6月20日に取引発生していますので、当該日付を記入します。次に、摘要には仕訳とその取引内容を記載することなります。今回はB得意先へ50,000円で販売し、同額の現金を受けとっていますので、「売上」を右側に記入し、「現金」を右側に記入します。取引内容の概要を今回は「B得意先への商品売却」としました。上記と同様にこの内容は決まりはなく、内容がわかるように記載するだけですので、再度言いますが間違ってお覚えないでください。ここは、単なるメモです。

ちなみに「元丁」と記載された箇所は、総勘定元帳の番号を記入(以下「③総勘定元帳でいうところ右上の数字箇所)することなります。

内容さえわかっていれば、あまり気にする必要がない記入箇所と考えています。

 

③総勘定元帳

 

 

上記のように「③総勘定元帳」を記入します。

取引「a.」及び「b.」の販売時の取引において起票した仕訳帳から総勘定元帳に転記したものとなります。

まずは総勘定元帳のうち取引「a.」の「仕入」と「買掛金」の組み合わせについて見ていきましょう。「年月日」は、「②仕訳帳」に記載の日付を記入します。また、摘要には「買掛金」を記載しています。

これは、「仕入」の相手勘定(一般的に対象にの勘定科目を相手勘定といいます)として買掛金を使用しているため、「買掛金」と記載しています。なおこれもメモなので、例えば「A社から仕入に伴う買掛金」と記載してもOKです。要は他人が見てもわかるように記載することが重要です。

また、仕入が増加(費用が増加)しているので、借方に30,000円を記載することになります。

同様に「買掛金」について見ていきましょう。「年月日」は、「②仕訳帳」に記載の日付を記入します。また、摘要には相手勘定である「仕入」を記載しています。

なおこれも上記と同様にメモなので、例えば「A社から仕入に伴う買掛金」と記載してもOKです。

また、買掛金が増加(負債が増加)しているので、貸方に30,000円を記載することになります。

 

続いて総勘定元帳のうち「現金」と「売上」の組み合わせについて見ていきましょう。「年月日」は、「②仕訳帳」に記載の日付を記入します。また、摘要には「売上」を記載しています。

これは、売上の対価として現金が増えているため、「売上」と記載しています。なおこれもメモなので、例えば「B社への売上として現金受取」と記載してもOKです。

また、現金が増加(資産が増加)しているので、借方に50,000円を記載することになります。

同様に総勘定元帳のうち上部の「売上」について見ていきましょう。「年月日」は、「②仕訳帳」に記載の日付を記入します。また、摘要には「現金」を記載しています。

これは、売上の対価として現金を受け取っていますので、「現金」と記載しています。なおこれも上記と同様にメモなので、例えば「B社への売上として現金受取」と記載してもOKです。

また、売上が増加(収益が増加)しているので、貸方に50,000円を記載することになります。

総勘定元帳は、簿記に慣れていない方の中には難しいと感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、仕訳を記載する一形態と考えていただければと思います。

重要なのは、「①仕訳」です。主要簿として位置づけられる「②仕訳帳」と「③総勘定元帳」はいずれも「①仕訳」を記入するための帳簿(言い換えるとノート)ですので、まずはその点の理解に努めてください。

 

④補助簿

以下は、現金を対象にした「④補助簿」である現金出納帳となります。

 

補助簿である現金出納帳も仕訳帳ををもとに記載します。

まず、1行目の繰越残高ですが、例えば、会社が前の年度末において10,000円残っていた場合の繰り越してきた金額のことをいいます。

この繰越残高は前期残高と記載されていることもありますが、要するに持ち越し分という理解で大丈夫です。

年月日欄は、仕訳帳から転記します。また摘要欄も取引の内容を記載します。今回は仕訳帳と同様の内容を転記していますが、記載方法に決まりがあるわけではありません。こちらも内容がわかるように記載してください。

また、収入欄には、売上により増えた50,000円を記載しています。例えば、仕入を現金で支払った場合には、支出欄に記載することなります。残高は、202●年6月20日後の残っているお金を示すものとなります。

 

①~④のまとめ

①仕訳、②仕訳帳、③総勘定元帳、④補助簿の4つについて説明させていただきました。

 

ここで再度確認していきたいのは、起点は「①仕訳」であり、これが簿記を勉強するうえで最も重要な要素になります。

②~④については、単なる帳簿(仕訳を記帳するためのノートをみたいなもの)なので、一度記入の流れを理解さえわかれば後は同じです。

具体的には、「①仕訳」を「②仕訳帳」を作成し、「②仕訳帳」を起点に「③総勘定元帳」と「④補助簿」に転記していくというものです。

と上記は仮にすべて紙で記帳した場合を前提です。実務上はシステムの種類にもよりますが、その多くは「②仕訳帳」に記載すると自動で「③総勘定元帳」、又はものによっては「④補助簿」に反映されます。また、「④補助簿」に記載すると自動で、「②仕訳帳」、「③総勘定元帳」に反映されます。上記の説明はあくまでも手で記入することを前提とした流れとなります。

とはいえ基本を理解しておかなければ、その応用もできないので、まずは下記の①~④の流れを理解をしてもらえばと考えています。

 

⑤試算表

以下の表は、取引反映前と取引反映後の試算表となります。

 

取引反映前の残高試算表は、現金と資本金がそれぞれ10,000となっています。会社設立時に資本金として10,000を拠出したことをイメージしていただければと思います。

その後、取引「a.」及び「b.」を反映した試算表が取引反映後の残高試算表となります。

試算表には、取引「a.」のテレビを30,000で仕入した仕訳と、掛け取引である買掛金30,000が反映されているっことわかります。

また、同様に取引「a.」のテレビを50,000で販売した仕訳と、同額の現金が増加している仕訳が反映されています。

なお、現金は取引反映前において10,000持っていましたので、10,000と販売により増加した50,000の合計60,000が取引反映後の残高試算表に反映されています。

試算表には上記の残高試算表の他、合計試算表、合計残高試算表がありますが、別記事で詳細なご説明をさせていただきます。

なお試算表の形式はいくつかあるものの最終的には貸借対照表及び損益計算書を作成するための手段です。ここでは、貸借対照表及び損益計算書の過程において試算表を経由することを抑えていただければ十分となります。

 

⑥精算表

試算表が完成するといよいよ、貸借対照表と損益計算書作成の最終段階の精算表を作成することとなります。

精算表は決算整理仕訳を含めた損益計算書及び貸借対照表を作成するためのツールとなります。

精算表の具体例は以下のようにとなります。

 

 

上表の精算表のうち試算表欄には、先ほど作成した残高試算表の金額を転記することになります。

また、精算表の修正記入欄は、過去に間違ったものを記載するという意味での修正ではなくて、決算整理仕訳を記載することになります。

決算整理仕訳についてここでは例えばレジの釣銭100円が合わない場合に、当該100円を最終的には費用として計上、あるいはテレビを仕入たけど、まだ販売していない在庫が残っていた場合に、調整するための仕訳を記載する箇所と考えていただければと思います。

今回は、全体の理解をしてもらうために、あえて決算整理部分を割愛しています。

決算整理仕訳も正確な貸借対照表及び損益計算書を作成するための仕訳の一部ですので、あまり強く意識する必要なく、単に仕訳が起票するタイミングが年度末に行う仕訳ぐらいに考えてもらっても問題ありません。

ただし、日商簿記3級は検定試験となりますので記載箇所は「修正記入」欄に記載しなければならない点に留意が必要となります。詳細な説明は別の機会にさせていただきます。

最後に、費用と収益に該当する項目を損益計算書欄に、資産、負債、及び純資産に該当する項目を貸借対照表覧に記載することとなります。

上表の精算表でいうところ、費用は「仕入」が該当しますので、「仕入」を損益計算書の借方欄に、収益は「売上」が該当しますので、「売上」を損益計算書の貸方欄に記入します。

また、資産は「現金」が該当しますので、「現金」を貸借対照表の借方欄に、負債は「買掛金」が該当しますので、「買掛金」を貸借対照表の貸方欄に記入します。

さらに、純資産は「資本金」が該当しますので、「資本金」を貸借対照表の貸方欄に記入します。

そして、損益計算書欄における、売上50,000と仕入30,000との差額を20,000が当期純利益となります。当期純利益は、会社の余剰金となりますので同額が純資産の増加として貸方に反映されることとなります。

ちなみに純資産については日商簿記3級においては個人事業主を想定した簿記であり、株主資本等がメインの試験範囲でないことを勘案すると、上記程度の理解で十分かと考えています。

 

 

⑦損益計算書、⑧貸借対照表

 

精算表まで完成すれば、あとは損益計算書と貸借対照表として分類すれば完成となります。

以下は、貸借対照表と損益計算書となります。

 

 

簿記3級では上記の形式で出題されることが多いですが、実務上は上記の形式には限られません。

例えば以下にように損益計算書を作成することがあります。

 

上記ように形式は色々あり形を覚えてあまり仕方がないので、どの形式で出てきたとしてもびっくりせず損益計算書であれば、経営成績を表すものと理解することが重要となります。

 

まとめ

 

1.簿記の最終目的は貸借対照表、損益計算書の作成すること

2.決算書作成までの流れは簿記を勉強するうえで重要な事項のためまずおさるべき事項

3.仕訳は簿記の起点である

4.「①仕訳」をもとに「②仕訳帳」を作成し、「②仕訳帳」を起点に「③総勘定元帳」と「④補助簿」に転記

5.試算表は、貸借対照表及び損益計算書のもととなる表

6.精算表は、貸借対照表及び損益計算書を作成するためのツール

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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