税務個別論点

法人税法上の完全支配関係

法人税法上の完全支配関係とは

法人税法における完全支配関係がある場合、グループ法人税制(グループ法人単体課税制度)の強制適用を受けることとなります。では、法人税法上における完全支配関係とは、どのようなものをいうのでしょうか。法人税法第2条12の7の6では以下のように規定されています。

法人税法第2条12の7の6

完全支配関係 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう。

なお、「一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係」とは、法人税法施行令第4条の2第2項において以下のように定められています。

法人税法施行令第4条の2第2項

2 法第二条第十二号の七の六に規定する政令で定める関係は、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(発行済株式(自己が有する自己の株式を除く。)の総数のうちに次に掲げる株式の数を合計した数の占める割合が百分の五に満たない場合の当該株式を除く。以下この項において同じ。)の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下この項において「直接完全支配関係」という。)とする。この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人又は当該一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなす。
一 当該法人の使用人が組合員となつている民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項(組合契約)に規定する組合契約(当該法人の発行する株式を取得することを主たる目的とするものに限る。)による組合(組合員となる者が当該使用人に限られているものに限る。)の当該主たる目的に従つて取得された当該法人の株式
二 会社法(平成十七年法律第八十六号)第二百三十八条第二項(募集事項の決定)の決議(同法第二百三十九条第一項(募集事項の決定の委任)の決議による委任に基づく同項に規定する募集事項の決定及び同法第二百四十条第一項(公開会社における募集事項の決定の特則)の規定による取締役会の決議を含む。)により当該法人の役員又は使用人(当該役員又は使用人であつた者及び当該者の相続人を含む。以下この号において「役員等」という。)に付与された新株予約権(次に掲げる権利を含む。)の行使によつて取得された当該法人の株式(当該役員等が有するものに限る。)
イ 商法等の一部を改正する等の法律(平成十三年法律第七十九号)第一条(商法の一部改正)の規定による改正前の商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百十条ノ二第二項(取締役又は使用人に譲渡するための自己株式の取得)の決議により当該法人の役員等に付与された同項第三号に規定する権利
ロ 商法等の一部を改正する法律(平成十三年法律第百二十八号)第一条(商法の一部改正)の規定による改正前の商法第二百八十条ノ十九第二項(取締役又は使用人に対する新株引受権の付与)の決議により当該法人の役員等に付与された同項に規定する新株の引受権
ハ 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)第六十四条(商法の一部改正)の規定による改正前の商法第二百八十条ノ二十一第一項(新株予約権の有利発行の決議)の決議により当該法人の役員等に付与された新株予約権

また、法人税法施行令第4条の2第2項の記載のある特殊関係のある個人とは、一の者である株主等が個人である場合のその株主等が該当することとなります。また、同項の「発行済株式等」からは、自己の有する自己の株式及び発行済株式の総数のうち①従業員持株会の所有株式又は②ストックオプションの行使により取得された株式の数を合計した数の割合が100分の5未満である場合は、当該株式を除く旨が規定されています。

また、完全支配関係の判定を行う際に留意しなければならないのが、発行済株式の議決権の有無は問われていない点が留意が必要となります。これは法人税法が経済的な支配に重点を置いたことによるものとなります。このため、例えばA法人がB法人の発行している普通株式の全部を保有している場合でも、A法人による完全支配関係にないC法人がB法人の発行している無議決権株式を保有している場合には、A法人とB法人との間には完全支配関係がないことなります。

会計における連結基準では、議決権による支配を重視している点で異なるため留意が必要なります。

なお、完全支配関係の判定における従業員持株会の範囲おひょび従業員持株会の構成員たる使用人の範囲については、基本通達において以下のように規定されています。

(完全支配関係の判定における従業員持株会の範囲)
1-3の2-3 令第4条の2第2項第1号《支配関係及び完全支配関係》に規定する組合は、民法第667条第1項《組合契約》に規定する組合契約による組合に限られるのであるから、いわゆる証券会社方式による従業員持株会は原則としてこれに該当するが、人格のない社団等に該当するいわゆる信託銀行方式による従業員持株会はこれに該当しない。(平22年課法2-1「四」により追加)

(従業員持株会の構成員たる使用人の範囲)
1-3の2-4 令第4条の2第2項第1号《支配関係及び完全支配関係》の「当該法人の使用人」には、法第34条第6項《使用人兼務役員の範囲》に規定する使用人としての職務を有する役員は含まれないことに留意する。(平22年課法2-1「四」により追加、平29年課法2-17「三」により改正)

上記のように法人法通達において従業員持株会の範囲やその使用人の範囲について規定されていますので、参考にしてみてください。

また、「支配関係及び完全支配関係」の通達は以下において規定されておりますので、必要に応じてご確認ください。

支配関係及び完全支配関係に係る国税庁通達

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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