税務個別論点

期限切れ欠損金の取扱い

繰越欠損金

青色申告法人には、欠損金の繰越控除(繰越欠損金の充当)と欠損金の繰戻しによる還付の制度が設けられています。

内国法人の各事業年度の開始の前10年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額がある場合には、当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。

ただし、資本金が1億円超え等の中小法人等以外の法人は、所得の金額を全額に対して繰越欠損金を充当することはできず、各事業年度の所得の金額の100分の50に相当する金額が限度となります(法人税法第57条)。

また、上記の通り「前10年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額」と繰越欠損期間を10年と定めていますが、当該改正は平成27年度及び平成28年度の税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用されるものとなり、平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額については、「前9年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額」となることから、平成20年4月1日から平成30年3月31日までに開始した事業年度において生じた欠損金額は、9年が繰越欠損金の有効期限となります。

 

期限切れ欠損金の取扱い

青色申告法人には、欠損金の繰越控除と欠損金の繰戻しによる還付の制度が設けられており、平成20年4月1日から平成30年3月31日までに開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は10年となっていることから、当該期限を経過した繰越欠損金である期限切れの欠損金は、原則として所得の金額の計算上、損金の額に算入できません。

しかしながら、以下のような事由に該当する場合は、例外的に過去に期限が切れた欠損についても充当できる定めがあります(法人税法第59条)。

①内国法人において会社更生法の規定により更生手続開始の決定があった時で、債務について債務免除を受けた場合

②内国法人において会社更生法の規定により更生手続開始の決定があった時で、役員等から金銭その他の資産の贈与を受けた場合

③内国法人において会社更生法又は金融機関等の更生手続等に従って、評価替えを行った場合

④内国法人において民事再生法の決定があった時で、債務について債務免除を受けた場合

⑤内国法人において民事再生法の決定があった時で、役員等から金銭その他の資産の贈与を受けた場合

⑥内国法人において民事再生法の決定に従って、評価替えを行った場合

⑦内国法人において会社法の規定による特別清算開始の命令があったこと

⑧内国法人において破産法の規定による破産開始手続開始の決定があったこと

⑨⑦又は⑧に掲げる事実に準ずる事実

⑩解散した法人の残余財産がないと見込まれる場合

なお、⑨における事実は、以下の法人法基本通達12-3-1において記載されています。

法人税法基本通達12-3-1 

令第117条の3第3号《再生手続開始の決定に準ずる事実等》に規定する「前条第1号又は前2号に掲げる事実に準ずる事実」とは、次に掲げる事実をいう。(平17年課法2-14「十三」、平23年課法2-17「二十六」、令4年課法2-14「三十六」により改正)

(1) 令第117条の2各号《民事再生等の場合の債権の範囲》並びに令第117条の3第1号及び第2号に掲げる事実以外において法律の定める手続による資産の整理があったこと。

(2) 主務官庁の指示に基づき再建整備のための一連の手続を織り込んだ一定の計画を作成し、これに従って行う資産の整理があったこと。

(3) (1)及び(2)以外の資産の整理で、例えば、親子会社間において親会社が子会社に対して有する債権を単に免除するというようなものでなく、債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理があったこと。

 

上記にように、期限切れ欠損金を使用することは限定的な場面となりますが、当該場面においては留意が必要となります。

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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