純資産はどんなもの?
ポイント
・純資産とは資産と負債の差額
・純資産は、株主資本と評価・換算差額等に分類される
「1-2.【貸借対照表】貸借対照表はどう見ればいい?貸借対照表の注目ポイント!」に記載の通り、貸借対照表は大きくわけて資産、負債、及び純資産に区分されます。今回は左記のうち純資産について詳しくみていきたいと思います。
純資産とは、資産と負債の差額をいいます。
純資産は、株主資本と評価・換算差額等に分類されます。
以下の表は、純資産を分類したものなります。
上記のうち株主資本は、主として会社の株主が出資した資本金、資本取引から生じた資本剰余金と会社が経営のなかで生み出した利益の累積額である利益剰余金で構成されています。
このうち、資本金は株主が直接出資したものです。
また、資本剰余金の構成要素のほとんどが資本金に入れなかった余った資本準備金となります。
会社法では、出資金の2分の1を超えない額は資本金として計上せず、資本準備金(資本剰余金の構成要素の1つ)として計上することができます。
例えば、株主が1,000円出資した場合に、会社は資本金を500円、資本準備金500円と分けることができます。
2分の1を超えない金額なので、資本金を700円、資本準備金300円に分けることもできます。
資本準備金も株主の出資金を構成しているため、基本的には、マイナスになることがありません。
資本剰余金は資本準備金が大半を占めている場合ほんとんどなので、まずは資本剰余金≒資本準備金と考えても大きくはずさないかと思います。
なお、資本剰余金は資本準備金の他、その他資本剰余金で構成され、その他資本剰余金は資本準備金の取り崩し額、自己株式処分差額等から構成されます。
上記の他、純資産は利益剰余金があります。
利益剰余金は、利益準備金とその他利益剰余金で構成されます。
その他利益剰余金は、繰越利益剰余金と任意積立金から構成されます。
利益ではなく赤字が続くと、繰越利益剰余金はマイナスとなることがあります。
繰越利益剰余金のマイナスが積み上がり、資本金の金額を超えている状態を債務超過といいます。
例えば、資本金1,000円の会社があるとします。会社を経営を行っていたが、コロナウィルスの影響により損失が積み上がり、繰越利益剰余金△1,500円となった場合、純資産額は△500円(1,000円-1,500円=△500円)と純資産がマイナスとなっている会社を債務超過の状態といいます。
債務超過の状態は資産より負債のほうが大きい状態となっていることから、この状態が続くと会社は通常倒産します。
但し、実務上では債務超過が続いていてもなかなか潰れません。
会社が潰れるのは、借入先や支払い先にお金が払えなくなった時に潰れます。
一般的に資金ショートといったりするのですが、「お金が払えない又は払う目途が立たない=会社として信用が完全になくなる」自体に陥り、仕入を行うことができず、従業員に給料を払えなくなり、最終的に会社が潰れます。
給料が支払いが遅れている場合、会社としてはかなり末期な状態ですので、注意してください。
また、債務超過が続いている会社と取引する場合は注意が必要です。
上記で説明した純資産のうち、まずは基本となるのは、株主資本、資本金、資本剰余金、利益剰余金となりますので、それらの理解を優先していただければと思います。
なお、会社の規模が大きくなったり、会社の経営期間が長くなったりすると、他の項目についてもよく出てきますので、以下説明します。
まず、上表における株主資本に分類されるもののうち、自己株式について説明します。
自己株式とは、株式会社が発行する株式のうち、当該株式会社が自社の株式を取得し保有しているものをいいます。属に「金庫株」と呼ばれることもあります。
株式会社では、何らかの理由により自社の株式である自己株式を保有する場合があり、自己株式を取得した株式会社にとっては株主への資本の払い戻しと見なされます。
ただし、自己株式は再度市場に売却することができますので、資本金や資本準備金から直接控除するのではなく、株主資本から控除する形式で表示されます。
純資産には、株主資本と評価・換算差額等に表示されます。評価・換算差額等の代表例としてその他有価証券評価差額金と繰延ヘッジ損益があります。
その他有価証券評価差額金は、売買目的有価証券以外の有価証券に係る評価損益を計上する箇所となります。理解の仕方としては、売買目的有価証券の評価損益は損益計算書へ、売買目的有価証券以外の有価証券の評価損益はと評価・換算差額等へと覚えておけば大丈夫です。
また、為替等の変動リスクを抑えるためにデリバティブ取引を実施することがあります。デリバティブ取引を含めたヘッジ取引については、別途詳細な説明させていただきますが、デリバティブ取引のうち一定の要件を満たすヘッジ取引については、ヘッジ会計というものを摘要することができ、デリバティブ取引に係る損益を直ちに損益計算書に計上するのではなく、貸借対照表に繰り延べることができます。このデリバティブ取引に係る損益を貸借対照表に繰り延べたものを繰延ヘッジ取引として表示します。
ここでは、デリバティブ取引のうち一定の要件を満たすものについて貸借対照表に繰延ヘッジ損益として繰り延べることができ、当該金額が繰延ヘッジ損益として計上されるという点だけ理解していただければ十分かと思います。
まとめ
① 純資産とは、資産と負債の差額
② 純資産は、株主資本と評価・換算差額等に分類
③ 株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式に分類
④ 自己株式は株主資本から控除
⑤ 評価・換算差額等にはその他有価証券と繰延ヘッジ損益がある