会計基礎編

1-6.貸借対照表を構成する負債にはどんなものがある!?これだけは押さえておきたい負債の理解

負債とはどんなもの?

 

ポイント

・負債とは過去の取引または事業の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物

・負債は流動負債と固定負債に分類される

 

1-2.【貸借対照表】貸借対照表はどう見ればいい?貸借対照表の注目ポイント!」に記載の通り、貸借対照表は大きくわけて資産、負債、及び純資産に区分されます。今回は左記のうち負債について詳しくみていきたいと思います。

負債とは、簡単にいうと将来に返さないといけない借金等を支払う義務をいいます。

会計ルール等を作成する機関である企業会計基準委員会における「財務会計の概念フレームワーク」では「負債とは、過去の取引または事業の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物をいう」と定義されています。

上記で言っていることがわからなくても大丈夫です。

とはいえ、気になる人のために簡単に解説します。不要な方は赤枠箇所は読み飛ばしてください。

 

コンビニを例に考えてみましょう。

コンビニは、お客様に商品を買ってもらうために、お菓子、雑誌、ジュース、お酒、アイス、お弁当、充電器といったあらゆる商品を仕入れるかと思います。コンビニが仕入行う際に、仕入業者に都度都度お金を払うということをしているでしょうか?

そうですね。皆様のご想像の通り、仕入の度にお金を払うような煩雑なことはせず、まとめて払うようなことが通常の運用(すなわち商取引)となります。

この仕入の際に、仕入代金を後ほど支払うことを約することを掛取引といいます。

掛取引が決算期残っている場合、会社は将来に代金を支払わなければならない義務を認識しなければならないことになります。

このため、決算期において100円の支払義務である掛け取引が残っていた場合、当該支払義務を負債として計上することになります。より具体的な仕訳を示すと以下のようになります。

(借方)仕入 100円 (貸方)買掛金 100円

なお貸方に記載している買掛金が、負債として計上されることとなります。

上記のような掛取引を「財務会計の概念フレームワーク」の定義に当てはめると「過去の取引または事業の結果として=仕入れという事業活動の結果」「報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物=仕入代金を将来に払わなければならない義務」と理解すれば、イメージとしやすいかもしれません。なお、同様に借入金等の将来の支払義務も負債に計上することになります。

 

負債には流動負債と固定負債に分類されます。

流動負債の多くは1年内に出金や決済されるものと理解して頂いて概ね差支えありません。正確に知りたい人は、※1をご参照ください。

 

※1:流動における区分ルール

流動負債かどうかの判定は、「正常営業循環基準」で判定した後に「1年基準」かどうかで判定することになります。

例えば、多くの産業においては通常1年内に仕入に対する支払を行うことが多いのですが、建設業等の長期工事を必要とするものについては、ものによっては、1年を超えて工事代金を支払うということがあります。しかし、1年を超えるものであっても、それが当該会社にとって、正常な営業循環にあるのであれば、流動負債に区分というものです。

これに対して、1年基準は決算日の翌日から起算して1年内に入金や決済される資産又は負債等をいいます。

上記の通り、会計上は「正常営業循環基準」で判定した後に「1年基準」かどうかで、流動負債か固定負債かを区分することになります。

ただし、「正常営業循環基準」で1年を超えるような業種は、建設業等の特定の業種に限られますので、「正常営業循環基準」は頭の片隅に置く程度で、流動負債と固定負債の区分は、まずは「1年基準」で判断すると考えていただいても、実務上はそれほど差支えないかと思います。

 

流動負債は、買掛金、支払手形といった仕入債務(仕入債務は実務上ほとんど勘定科目として使用されることはなく、仕入に関する債務の総称として使用されることがほとんどです。)、短期借入金及び1年内返済予定長期借入金等の借入金と、未払金、未払費用、預り金等のその他流動負債に分類されます。

なお、どこまで開示するかは各社によって変わってきます。一般的には未払金、未払費用は多額となることが多く開示されている会社が多いのが現状かと思います。

以下の表は上記で説明した流動負債を分類したものとなります。

 

 

固定資産は、長期借入金といった借入金に分類されるものと、一定の要件のもとに計上された役員退職慰労金、退職給付に係る負債等の引当金、長期未払金等のその他固定負債に分類されます。

また、上記の赤枠の通り、固定負債の多くは1年超えに出金や決済されるものと理解して頂いて概ね差支えありません。正確に知りたい人は、上記※1をご参照ください。

固定負債の例示は以下の通りです。

 

 

まとめ

① 負債とは、簡単にいうと将来に返さないといけない借金等を支払う義務

② 負債には流動負債と固定負債に分類

③ 流動負債は、買掛金、短期借入金等が該当する

④ 固定負債は、長期借入金、長期未払い金、退職給付に係る債務等が該当する

⑤ 流動負債と固定負債を分類する際に、「正常営業循環基準」及び「1年基準」に基づき判断される

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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