会計個別論点

資産除去債務

資産除去債務ってなぁに

 

ポイント

資産除去債務は会計上において建物等に対する将来に発生する原状回復義務等、法的義務に対して備えて見積計上するものとなります。

資産除去債務は建物等に対する将来に発生する原状回復義務等、法的義務に対して会計上手当しているものとなります。

もう少し具体的な例で見ていくと、例えば、A社が飲食店を始めるために、東京都内に物件を賃貸したとしましょう。

賃貸した物件には、調理等を行う場所が整備されておらず、A社はリフォーム工事を行って、調理できる場所及び飲食できる改装を行ったとします。

しかし、賃貸物件の場合、その多くは賃貸借契約書において退去時には借りた状態戻してねという原状回復義務の記載があることがほとんどです。

この原状回復費用は仮に100万円だったとします。

賃貸物件の場合、いずれ出ていくことが想定されるため、A社は会計上において将来支払う予定の100万円を負債に計上することとなります。

とはいえ、100万円が直ちに費用になるかというとそういうわけではありません。

通常は、リフォーム工事分を回収できることを期待するため、100万円について資産に計上することとなります。

上記のように、有形固定資産は資産に計上されたのちに、リフォーム工事と同様の耐用年数で徐々に費用として計上していくこととなります。例えば、リフォーム工事に係る耐用年数が10年定額法だったとした場合、以下のような仕訳となります。

 

 

 

資産除去債務は税務上の損金として認められるか?

資産除去債務は会計上において建物等に対する将来に発生する原状回復義務等、法的義務に対して備えて見積計上するものとなります。

税務は原則として確定してものしか損金として認めていないことから、資産除去債務は会計上の費用であって、税務上の損金として認めていないことから、税務上は損金として認められません。

税務上は原則として見積に基づいた損金計上は認められておらず、確定債務のみを損金計上とすることを求めています。このため、資産除去債務に係る減価償却費は、税務上の損金として認められないこととなります。

 

 

時間価値

資産除去債務には時間価値を考慮する必要がある。

レベル1で、リフォームに係る原状回復費用100万円を全額、有形固定資産(資産除去債務相当)と資産除去債務としてそれぞれ計上していましたが、実は計上金額は正確でありません。

資産除去債務には、時価価値を考慮しなければなりません。

具体的にいうと、原状回復を履行するのが、10年後であったとすると10年後における100万円価値は100万円より低いことがおおいのです。

んっ!?と思った方、全然問題ありません。今から少し説明させて頂きます。

例えば、あなたが手元に100万円を持っていたとします。

現状の日本低金利ではありえない話ですが、銀行の定期預金が1%とした場合、あなたの持っている100万円を定期預金に預けた場合、1年後に101万円となっています。

すなわち、1万円の利息が付いたのです。

この1万円部分が時価価値というものです。

すなわち、お金はおいているだけでお金を生み出すことができるので、現在の100万円と10年後の100万円は価値が違うというのが、時間価値の概念となります。

資産除去債務においても、この時間価値の概念が取り入れられています。

資産除去債務は、A社にとっては将来の100万円を払わなければならないという負債に該当するのですが、上記の例の通り、現在の100万円と10年後の100万円は価値が違います。

但し、負債の場合、上記の預金の場合とは逆に支払う金額が現在と10年後を比較した場合小さくなるというものです。

例えば、あなたが、100万円を1年後に支払わなければならないとします(なお、金利は1%と仮定します)。

この場合、あなたは、今現在において、100万円を持っている必要はなく、100万÷(1+1%)≒90万9,091円を預金しておければ、1年後に100万円となっているのです。

このため、資産除去債務の計上にあたっては、時間価値を考慮したうえで計上することとなります。

 

 

 

まとめ

①資産除去債務は会計上において建物等に対する将来に発生する原状回復義務等、法的義務に対して備えて見積計上するもの

②資産除去債務に係る減価償却費等の費用は税務上の損金としては認められない

③資産除去債務は時間価値を考慮する

 

 

 

 

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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