税務個別論点

簡易課税制度②

簡易課税制度の選択

簡易課税制度とは中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。

簡易課税制度を選択するために以下の要件をすべて満たす必要があります。

①消費税の課税事業者であること

②基準期間(通常であれば前々期)の課税売上高が5,000万円以下であること

③事前に納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していること

上記の要件をすべて満たした場合のみ、簡易課税制度の適用が認められます。

まず①「消費税の課税事業者であること」については、そもそも消費税の課税事業者に該当しないのであれば、消費税の納税義務が発生しないため、当然といえば当然となります。このため、前提として消費税の課税事業者であることが要求されています。

続いて②「基準期間(通常であれば前々期)の課税売上高が5,000万円以下であること」についてですが、簡易課税制度の趣旨は消費税申告に関して納税事務負担を配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度となっています。このため、一定規模以上の課税事業者に対しては、簡易課税制度は認められておらず、原則的な方法により計算することを求められています。

最後に③「事前に納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していること」ですが、簡易課税制度は上記の通り、あくまでも認められた簡易的な方法であることから、当該簡易的な方法を利用するために個人事業主又は法人が自ら、簡易課税制度を利用することについて意思表示しなければならず、そのために消費税簡易課税制度選択届出書の提出を求めています。

簡易課税制度が認められた場合、その提出があった日の翌課税期間以後から簡易課税制度に基づく計算が認められることとなります。

なお、簡易課税制度の計算方法の概要を知りたい方は、以下をご参照ください。

簡易課税制度①

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簡易課税制度の適用時期

簡易課税制度の適用時期については、原則として上記の通り、消費税簡易課税制度選択届出書の翌事業年度からの適用となるのですが、以下のような場合、消費税簡易課税制度選択届出書の提出があった事業年度より適用することが可能となっています。

①事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間

②個人事業者が相続により簡易課税制度の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合におけるその相続のあった日に属する課税期間

③法人合併(なお合併により法人を設立する場合を除きます。)により簡易課税の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該その合併があった日の属する課税期間

④法人が吸収分割により簡易課税制度の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合におけるその吸収分割があった日の属する課税期間

上記のうち①については、事業を新たに開始した個人の事業主や新設法人(新設合併又は新設分割により設立された法人を含む)等を対象に消費税簡易課税制度選択届出書の提出することによって、事業を開始した日の属する課税期間から簡易課税制度を適用することが認められています。新たに開始した個人の事業主や新設法人が具体的な例示となります。

②ついては、まず相続する資産を保有していた被相続人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、相続によりその被相続人の事業を承継した相続人には及ばないことが原則となります。したがって、当該相続人が簡易課税制度の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければなりません。すなわち、消費税簡易課税制度選択届出書の提出した場合に相続人はその提出した事業年度から簡易課税制度の適用を受けることが可能となります。
また、事業を営んでいない相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合又は個人事業者である相続人が相続により簡易課税制度の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合において、その相続人が相続があった日の属する課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、当該課税期間は、事業を開始した日の属する課税期間又は相続があった日の属する課税期間に規定する課税期間に該当することとなり、簡易課税制度の適用を受けることができます。
ただし、当該課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者に該当する個人事業者が相続により簡易課税制度の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合のその課税期間は、事業を開始した日の属する課税期間又は相続があった日の属する課税期間に規定する課税期間には該当しないこととされています(消費税通達13-1-3の2)。

③については、被合併法人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、吸収合併又は新設合併により当該被合併法人の事業を承継した合併法人には及びません。したがって、当該合併法人が法第37条第1項の規定の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければなりません。

また、法人が新設合併によりその事業を承継した場合又は吸収合併により簡易課税制度の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合において、その法人が合併があった日の属する課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その課税期間は、事業を開始した日の属する課税期間又は合併があった日の属する課税期間に規定する課税期間に該当することとされています。
ただし、当該課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者に該当する法人が吸収合併により法第37条第1項の規定の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合の当該課税期間は、事業を開始した日の属する課税期間又は合併があった日の属する課税期間に規定する課税期間には該当しないこととされています(消費税通達13-1-3の3)。

④については、分割法人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、分割により当該分割法人の事業を承継した分割承継法人には及ばないとされています。したがって、その分割承継法人が簡易課税制度の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければなりません。なお法第12条第7項第2号又は第3号《分割等の意義》に該当する分割等により新設分割親法人の事業を引き継いだ新設分割子法人についても同様とされています。

また、法人が、新設分割によりその事業を承継した場合又は吸収分割により簡易課税制度の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合において、その法人が新設分割又は吸収分割があった日の属する課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その課税期間は、事業を開始した日の属する課税期間又吸収分割があった日の属する課税期間に規定する課税期間に該当するものとされています。
ただし、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者に該当する法人が吸収分割により簡易課税制度の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合のその課税期間は、事業を開始した日の属する課税期間又吸収分割があった日の属する課税期間に規定する課税期間には該当しないものとされています。

国税HPより

なお、簡易課税制度の適用を受けないこととするには、その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

また、簡易課税制度の適用を受けた場合、原則として2年間は継続して適用しなければならない旨が定められている点に留意が必要となります(消費税法36条第5項、第6項)。

 

 

 

 

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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