リース会計基準

新リース会計の基礎を理解する!新リース会計基準の用語の定義を徹底解説

新リース会計基準の主要用語

新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用となる企業会計基準第34号「リースに関する会計基準(以下、「リース会計」という。)」および企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針(以下、「リース適用指針」という)は、特に借手側の会計処理に大きな変更をもたらします。

具体的には借手側では、今まで、オフバラ可能だったリース契約もオフバラが認められなくなるといった変更があるかと考えています。

この新しい基準を正しく適用するためには、まず基本的な用語の定義と意味を正確に理解することが不可欠です。本記事では、新リース会計基準における重要用語をピックアップし、その定義と具体的な解説をご紹介します。

1. 契約(リース会計基準第5項)

  • 定義: 「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいう。契約には、書面、口頭、取引慣行等が含まれる。

  • 解説: リース会計では、「契約」にリースが含まれているかということが非常に重要になります。このため、まず「契約」が存在するかどうかを識別することから始まります。収益認識会計基準における定義と同様に、契約書面があるかどうかの形式面だけでなく実質的な合意(口頭や取引慣行)も含まれます。

2. リース(リース会計基準第6項)

  • 定義: 「リース」とは原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいう。

  • 解説: このリースの定義を満たすものは、例え「リース契約書」という名前でなく、レンタル契約、不動産賃貸契約、電力売買契約等の名称であっても、リース会計基準の適用対象として取り扱われることとなります。

3. 借手(リース会計基準第7項)

  • 定義: 「借手」とは、リースにおいて原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換
    に獲得する企業をいう。

  • 解説: 借り手である顧客(ユーザー)を「レッシー」と言ったりします。

4. 貸手(リース会計基準第8項)

  • 定義: 「貸手」とは、リースにおいて原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換
    に提供する企業をいう。

  • 解説: 貸手であるリース会社を「レッサー」と言ったりします。

5. 原資産(リース会計基準第9項)

  • 定義: 「原資産」とは、リースの対象となる資産で、貸手によって借手に当該資産を使用す
    る権利が移転されているものをいう。

  • 解説: 借手が実際に使用する、物理的な資産やその他の資産を指します。土地、建物、機械装置、車両運搬具などが該当します。なお、貸手によるソフトウェアのライセンスについては、リース会計基準の対象外となります。また、借手のソウトウェアのライセンスについては、リース会計基準を適用は任意で決定することができます。

6. 使用権資産(リース会計基準第10項)

  • 定義: 借手がリース期間にわたり原資産を使用する権利を表す資産をいう。

  • 解説: 借手がリース契約に基づいて計上する資産です。原則として、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します。

7. ファイナンス・リース(リース会計基準第11項)

  • 定義: 「ファイナンス・リース」とは、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)
    の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、
    借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当
    該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリースをいう。

  • 解説: 従前の旧リース会計基準では、ファイナンス・リース取引と規定されたいたものが、定義を明確にされました。内容としては大きな変更はなく、従前の概念と異なることはありません。旧リース会計基準では、ファイナンス・リース取引となるか、オペレーティングリースと取引となるかで、借手として貸借対照表でオンバランスするかオフバランスになるかという重要な判定となっていたのですが、改定後の新リース会計基準では貸手にとっての開示する勘定科目が変わるることから依然として重要であるものの、借手にとっては、契約にリースが含まれるという時点で、オンバランスとなってしまうことから、ファイナンス・リース取引かオペレーティングリース取引については、実質的に影響ない事項となっています。

     

8. 所有権移転ファイナンス・リース(リース会計基準第12項)

  • 定義: 「所有権移転ファイナンス・リース」とは、契約上の諸条件に照らして原資産の所有
    権が借手に移転すると認められるファイナンス・リースをいう。

  • 解説: 旧リース会計基準では、ファイナンス・リース取引となるか、オペレーティングリースと取引となるかで、借手として貸借対照表でオンバランスするかオフバランスになるかという重要な判定となっていたのですが、改定後の新リース会計基準では貸手のみで判定されます。このため、借手は、契約にリースが含まれるかどうかという点が重要となる。

9. 所有権移転外ファイナンス・リース(リース会計基準第13項)

  • 定義: 「所有権移転外ファイナンス・リース」とは、所有権移転ファイナンス・リース以外
    のファイナンス・リースをいう。

  • 解説: ファイナンス所有権移転ファイナンス・リース以外のリースをすべてが所有権移転外ファイナンスリースとなります。

10. オペレーティング・リース(リース会計基準第14項)

  • 定義: 「オペレーティング・リース」とは、ファイナンス・リース以外のリースをいう。

  • 解説: リースを含む契約のうち、ファイナンスリースの定義に該当しないリースがオペレーティングリースなります。

11. 借手のリース期間(リース会計基準第15項)

  • 定義: 「借手のリース期間」とは、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の(1)及び(2)の両方を加えた期間をいう。
    (1)借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
    (2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間

  • 解説: 解約不能期間+延長オプションの対象期間(行使することが合理的に確実)+解約オプションの対象期間(行使しないことが合理的に確実)

12. 貸手のリース期間(リース会計基準第16項)

  • 定義: 「「貸手のリース期間」とは、貸手が選択した次のいずれかの期間をいう。
    (1)借手のリース期間と同様の方法により決定した期間
    (2)借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間(事実上解約不能と認められる期間を含む。)にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えた期間

  • 解説: 貸手は(1)の借手のリース期間と同様の方法により決定した期間と(2)解約不能期間(事実上解約不能期間を含む。)+再リース期間(明らかな場合)

13. 再リース期間(リース会計基準第17項)

  • 定義: 「再リース期間」とは、再リースに関する取決めにおける再リースに係るリース期間
    をいう。

  • 解説: リース契約には、リース契約終了後に再リースできるリース契約があり、当該再リースする期間となります。

14. リース開始日(リース会計基準第18項)

  • 定義: 「リース開始日」とは、貸手が、借手による原資産の使用を可能にする日をいう。

  • 解説: 実務上は、機械の設置が必要の場合があり、当該設置期間完了後をリース開始日としたりします。

15. 借手のリース料(リース会計基準第19項)

  • 定義: 「借手のリース料」とは、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関し
    て行う貸手に対する支払であり、次のもので構成される。
    (1)借手の固定リース料
    (2)指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料
    (3)残価保証に係る借手による支払見込額
    (4)借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額
    (5)リースの解約に対する違約金の借手による支払額(借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合)
    借手のリース料には、契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は含まれ
    ない。ただし、借手がリースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、
    リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成
    する部分として会計処理を行う場合を除く。

  • 解説: 実務においては、変動リース料というのも少なくなかったこともあり、変動リース料についても、明確に借手のリース料に含まれることを明記したところが特徴となります。

16. 借手の固定リース料(リース会計基準第20項)

  • 定義: 「借手の固定リース料」とは、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払であり、借手の変動リース料以外のものをいう。

  • 解説: 実務上は、固定リース料の契約が多いですが、実績等に応じて変動する変動リース料の契約もあることから、リース会計上明確にしています。

17. 借手の固定リース料(リース会計基準第21項)

  • 定義: 「借手の変動リース料」とは、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に
    関して行う貸手に対する支払のうち、リース開始日後に発生する事象又は状況の変化(時の経過を除く。)により変動する部分をいう。借手の変動リース料は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料とそれ以外の借手の変動リース料により構成される。

  • 解説: 同上

18. 残価保証(リース会計基準第22項)

  • 定義: 「残価保証」とは、リース終了時に、原資産の価値が契約上取り決めた保証価額に満たない場合、その不足額について貸手と関連のない者が貸手に対して支払う義務を課せられる条件をいう。貸手と関連のない者には、借手及び借手と関連のある当事者並びに借手以外の第三者が含まれる。

  • 解説: 残価保証とは、上記の通り、リース終了時におけるリース資産の時価が、契約に記載された金額を下回る場合に、不足額を借手等が支払うことをいいます。
    リース期間が、長期期間にわたることがあり、リース会社のリスクヘッジのために設定されることがあります。

19. 貸手のリース料(リース会計基準第23項)

    • 定義: 「貸手のリース料」とは、借手が貸手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払であり、リースにおいて合意された使用料(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)をいう。貸手のリース料には、契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は含まれない。また、貸手のリース料には、将来の業績等により変動する使用料は含まれない。

    • 解説: リース会社である貸手において貸手のリース料の定義を明確化することで、その対象範囲を限定しています。

20. リースの契約条件の変更(リース会計基準第24項)

    • 定義: 「リースの契約条件の変更」とは、リースの当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲又はリースの対価の変更(例えば、1つ以上の原資産を追加若しくは解約する
      ことによる原資産を使用する権利の追加若しくは解約、又は、契約期間の延長若しくは
      短縮)をいう。

    • 解説: リースの契約条件の変更が行われた場合、「変更前のリースとは独立したリースとしての会計処理」又は「リース負債の計上額の見直し」を行うこととなります。




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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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