圧縮記帳に関する会計上の取扱い
圧縮記帳は税務上において規定されている処理であり、会計上において国庫補助金等によって取得した資産以外についてはその会計処理方法が明記されていません。このため当該会計処理を決定するにあたり、監査第一委員会報告第43号「圧縮記帳に関する監査上の取扱い」を参考にその会計処理は決定することが望ましいと考えられます。
なお、圧縮記帳に関する会計上の取扱いの概要は以下の通りとなります。
ポイント
当面は以下の取引は適当な会計処理として取り扱うとしている。
・国庫補助金、工事負担金等で取得した資産については、国庫補助金等に相当する金額をその取得原価から控除することができる。
・交換により譲渡資産と同一種類、同一用途の固定資産を取得し、取得資産の取得価額として、譲渡資産の帳簿価額を付した場合
・収容等により資産を譲渡し新たに取得した資産が、譲渡資産と同一種類、同一用途である等取得資産の価額として譲渡資産の帳簿価額を付すことが適当と認められるときに、譲渡益相当額をその取得価額から控除した場合
圧縮記帳の会計処理(国庫補助金等)
圧縮記帳とは税務上において規定されている処理で、一定の条件を満たした有形固定資産の取得に関して収益が発生した場合に、その取得価額を圧縮(減額)することにより、当該収益を直ちに課税の対象にしないことをいいます。
圧縮記帳には、法人税法で規定されているものと租税特別措置法で規定されているものとがあります。
具体的は、国庫補助金等、保険金等、交換により取得した資産、収用等、特定資産の買換え等による圧縮記帳があります。
このうち、国庫補助金等については企業会計原則注24にて以下のように規定されています。
企業会計原則注24
国庫補助金等によって取得した資産について
国庫補助金、工事負担金等で取得した資産については、国庫補助金等に相当する金額をその取得原価から控除することができる。
この場合においては、貸借対照表の表示は、次のいずれかの方法によるものとする。
取得原価から国庫補助金等に相当する金額を控除する形式で記載する方法
取得原価から国庫補助金等に相当する金額を控除した残額のみを記載し、当該国庫補助金等の金額を注記する方法
このため、国庫補助金等で取得した資産については、上記に基づき取得価額から控除することとなる。
例題を示すと以下のようになります。
【前提事項】
①A社は3,000の機械装置の現金で支払いました。
②国から機械装置の取得に充てるための補助金として1,000をA社は現金で受け取りました。
③A社は交付を受けた補助金1,000を対象に圧縮記帳を実施しました。
【仕訳】
①(借方)機械装置 3,000 (貸方)現金 3,000
②(借方)現金 3,000 (貸方)受取補助金 3,000
③(借方)機械装置圧縮損 1,000 (貸方)機械装置 1,000
なお本例題においては、補助金の全額を圧縮損としましたが、実務上は圧縮記帳を行う場合、法人税施行令第82条に基づき、圧縮限度額の計算を行う必要がある点に留意してください。
圧縮記帳の会計処理(交換、収用等)
以下のような場合には、取得した資産の取得価額を譲渡資産の帳簿価額とすることができます。
・交換により譲渡資産と同一種類、同一用途の固定資産を取得し、取得資産の取得価額として、譲渡資産の帳簿価額を付した場合
・収容等により資産を譲渡し新たに取得した資産が、譲渡資産と同一種類、同一用途である等取得資産の価額として譲渡資産の帳簿価額を付すことが適当と認められるときに、譲渡益相当額をその取得価額から控除した場合
上記のように、取得した資産の取得価額を譲渡資産の帳簿価額を付す考え方は、同一種類、同一用途の固定資産間の交換の場合、譲渡資産と取得資産との間に連続性が認められるので、会計上両者を同一視することができ、実質的に取引がなかったものと考えられるからとなります(連続意見書)。
このため、法人税法第50条に定める交換及び租税特別措置法第65条に定める換地処分等で、自己所有の固定資産と交換に同一種類、同一用途の固定資産を取得したときは、上記の通り資産間の連続性又は同一性が認められるので、譲渡資産の帳簿価額を取得資産の取得価額とすることができるものとしています。