会計個別論点

固定資産の減損①

固定資産の減損とは

固定資産の減損とはなんでしょうか。固定資産の減損は、会計基準上において以下のように定義づけられています。

固定資産の減損とは、有形・無形の固定資産に関して収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態において、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額することをいいます。

上記でわかる人は問題ないのですが、固定資産の減損になじみない人にはわかりにくいかと思います。

私も初回に読んだときは全く意味がわかりませんでした。

でも、安心してください。以下で具体例に基づき解説させていただきます。

例えば、仮にあなたの会社でパン屋を始めるとします。

そしてパン屋を始めるにあたり、100万円の機械装置が必要なため期首に現金で購入したとします。

また機械装置は、10年定額法で償却(直接法)するものとします。

話を単純化するために、機械装置以外の固定資産はないものとします。

仕訳は以下の通りとなります。

 

【購入時】

(借方)機械装置 100万円 / (貸方)現金 100万円

 

【決算日(1年目)】

(借方)減価償却費 10万円 / (貸方)機械装置 10万円

 

ここまでは大丈夫でしょうか。ここで確認していただきたいことは、機械装置の簿価は100万円から減価償却費を通して1年目の簿価は90万円(100万円-90万円)に減額されたということです。

2年目、3年目も同様に以下の仕訳が計上されます。

 

【決算日(2年目)】

(借方)減価償却費 10万円 / (貸方)機械装置 10万円

 

【決算日(3年目)】

(借方)減価償却費 10万円 / (貸方)機械装置 10万円

 

上記と同様に、機械装置の簿価は、当初の100万円から減価償却費を通して2年目は80万円(100万円-10万円-10万円)、3年目は70万円(100万円-10万円-10万円-10万円)となります。

このように機械装置の簿価は毎期減価償却を通じて減額していきます。

しかし、パン屋の事業思いのほか、1期目以外は、客足低下と小麦等の原材料の高等により営業損益ベースで以下のような赤字を出し続けていたとします。

 

 

上記のような状況だと、100万円の機械装置を投資したにも関わらず、営業損失を毎期出している状況であり、機械装置という100万円の投資が回収できない可能性があります。

このような営業損失が継続してしまっている状態(会計基準ではおおむね過去2期継続してマイナスの場合としています)の会社には、減損損失の会計基準が適用されます。

では、どれだけ減損損失が計上されるのでしょうか。

わが社であるパン屋も3年経過時点、赤字続いている状況で赤字継続はまずいと考えており、既に手はうっており少しずつ改善施策を考慮した結果、残り7年で50万円程度の将来キャッシュイン(割引後)を見込めるということがわかりました。なお、機械装置の売却価値はゼロとします。

この結果、機械装置の簿価70万円と回収可能価額(上記の場合、将来キャッシュインである50万円と売却価値ゼロを比較して大きいほう)50万円との差額20万円を減損損失として計上することとなります。

以下は、減損損失のイメージ図となります。

 

上記はかなり簡略化した説明とさせていただきましたが、イメージできましたでしょうか。

おさらいとなりますが固定資産の減損とは、有形・無形の固定資産に関して収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態において、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額することをいいます。

「収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態」とは、上記の例でいうところ営業損益が2年目と3年目が継続してマイナスとなっていることをいいます。

また、「回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する」という部分は、機械装置70万円と回収可能価額50万円(将来キャッシュイン見込額)と差額20万円を減損損失として減額することをいいます。

もっとひらたくいうと、将来に回収できないってわかってるだったら、先に損失を計上しておいてねというのが、固定資産の減損となります。

なお、「一定の条件の下で回収可能性を反映させるように」という部分は、少し論点があるので別の機会で説明させて頂こうかと思いますが、まずは概要の理解に努めていただければと思います。

固定資産の減損は、以下の式を覚えておけば、会議等でおいてけぼりになることはないかと思います。

 

ポイント

帳簿価額>回収可能価額の場合⇒減損損失を認識

 

なお、回収可能額とは上表のなかでも記載させていただいておりますが、簡単にいうと使い続けた場合の「使用価値」と、減損を判定する時点(例えば3月31日)の売却価値である「正味売却価額」とを比較していずれか高いほうのことをいいます。

なぜ使用価値と正味売却価額の高いほうになるかというと、例えばあなたが経営者だったとして、会社にできるだけお金を残したいと考えた場合に、売ったほうが得だったら売るという選択をするかと思いますし、使い続けたほうが得だったら使い続けるという選択をするというのが、通常かと思います。

このため、固定資産の減損において、使用される回収可能価額は、使用価値又は正味売却価額のうちいずれか高い方が選択されます。

 

まとめ

1.固定資産の減損とは、帳簿価額が回収可能価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額する処理

2.回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のいずれか高いほうを採用する

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公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

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