会計と税務の違い
皆様のなかでもお仕事をされているなかで、会計という言葉や税務という言葉を聞いたことがあるかと思います。
それでは、会計と税務の違いとはなんでしょうか?
ポイント
会計は一定期間の経営成績及び一定時点の財政状態を表すことを目的とし、税務は、税金納税額を決定するために必要な計算を行うことを目的としています。
会計と税務はいずれも数値により、利益(税務の場合は所得という)の金額を表示するものである点は共通しているのですが、その目的が異なるため、会計における利益と税務における所得は違う数字が出てきます。
会計と税務が同じであれば、こんなにややこしくはならないのにといつも思ってしまいます。
とはいえ、日本の制度として異なるものがあるためそれぞれ概要を理解していきましょう。
まず、会計には一定の共通のルールに従って外部に報告するために作成する財務会計と社内の原価等を管理するための管理会計がありますが、ここでは、財務会計の意味で会計という言葉を使います。
会計の目的は、会社が一定の期間(通常は1年)の間にいくらの売上を上げて、いくら儲かったのかすなわち経営成績とどれだけお金が残っているか等の財政状態を表すことにあります。
仮に4月に開始、3月に決算を迎える会社があった場合、1年の間にいくら儲かって、いくら費用が発生し、いくら儲かったのかを把握しなかった場合、会社はいつの間にかお金がなくなり潰れてしまうかもしれません。
そんなことが起きないようにするために、会計は一定期間の経営成績を損益計算書という財務諸表で、また現金等の資産が1年の終わりにいくら残っているかを把握するために、貸借対照表を作成しているのです。
これに対して、税金の目的は税金納税額を決定するために必要な計算を行うことを目的としています。
税金の中には、法人税法、所得税法、消費税法等、多くの税法が定められており、各種税法に記載された条文に基づき、税金が課せられることになります。なぜ、このように細々と決めれられているかというと…
例えば、日本にある全部の会社に「今年の税金は1億円ね」と言われても、払える会社と払えない会社が出てくることは、容易に想像できるかと思います。
このため、どれだけその会社が税金を払える能力(担税力といったりもします)があるかを図るために、会計において算出した利益に一定の調整を行った所得金額を算定し、所得金額に基づき課税するという手続きを取ります。
このように、会計と税金ではその目的を異にするため、会計では売上等の会社にとってお金が増える要素となるものを収益といい、お金が出ていく項目を費用といいます。
これに対して、税務では、売上等のお金が増える要素を益金といい、お金が出ていく項目を損金といい、表現方法を変えています。
では、具体的にどのような点において異なるかを簡単に見ていきましょう。
【前提条件】
①A社は、×1年4月から×2年3月までの1年を計算期間とする会社です。
②A社は、×1年4月から×2年3月の1年の会社への貢献度に応じて、従業員の賞与の金額を決めています。
③A社が決定した賞与金額は全体で100とします。
④A社の従業員への賞与の支払は×2年6月とします。
以下は、賞与計算期間と賞与支給月を図式したものとなります。
上記の通り、会計上は賞与計算期間の3月末において全額費用にするのに対して、税務上は支給のタイミングでしか損金として認めないというものです。
すなわち、会計上と税務上では費用(又は損益)されるタイミングが異なることとなります。
上記の例は、仕訳を無視してできるだけ簡略化しましたが、会計と税務の違いについてイメージはついたのではないでしょうか。
会計も税務もいずれも発生主義を採用しているものの、賞与のような見積に関するものについては、税務上は損金として認めない方針としています。
このような会計と税務の違いは、退職金に関する考え方(退職給付引当金)や、不動産等の解約した場合における原状回復義務(資産除去債務)等の見積の考え方においても同様に発生します。
このように、会計上は適正な期間損益であるのに対して、税務上では、税金を実際に支払う能力を示す言葉である担税力を重視することにより上記のような違いが発生します。
まとめ
①会計は一定期間の経営成績及び一定時点の財政状態を表すことを目的とし、税務は、税金納税額を決定するために必要な計算を行うことを目的とするため、目的の違いにより経理処理が異なる場合がある
②会計も税務もいずれも発生主義を採用しているものの、賞与のような見積に関するものについては、税務上は損金として認めない方針としています。