税務個別論点

グループ法人税制①

グループ法人税制とは

グループ法人税制とは、完全支配関係を有する法人をグループとして着目し、課税の中立性や公平性等を確保する観点から、実態にあった課税ができるよう整備された制度をいいます。

グループ法人税制の対象は、100%グループ内の関係である完全支配関係のある法人を対象としています。
なお、「完全支配関係とは一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう(法人税法第12条の6)」と定義されています。

すなわち、税務上においては、直接、間接に関わらず100%の株式又は出資を保有する完全子会社に対してグループ法人税制が適用されることとなります。

またグループ法人制度は、大きく分けて法人税を連結グループ(完全支配関係に限る)で計算するグループ通算制度と単体課税において適用されるグループ法人単体課税制度に分類されます。

グループ通算制度はその適用するかどうかを各社が任意で決定することができますが、グループ法人単体課税制度は強制適用される点に留意が必要となります。

グループ法人単体課税度制度が適用される完全支配関係間の取引のうち資産の譲渡取引等については、税務上その損益を実現させずに課税の繰延べ等の措置が講じられることとなります。

以下グループ法人制度のうち、グループ法人単体課税制度について説明を行っていきます。

 

グループ法人単体課税制度の対象取引

≪グループ法人単体課税制度の適用対象となる取引等≫

項目 概要
①資産の譲渡取引等 国内の取引が課税繰延べ対象なりますが、海外への取引は例え100%子会社であっても課税繰延べ対象外となります。
②受取配当等 内国法人で完全支配関係がある法人間の配当等の額については、配当等の額の全額を益金の額に算入されます。
③寄附金、受贈益 完全支配関係がある他の内国法人に行う寄附金、又は他の内国法人より受けた受贈益について損金又は益金に算入されないことなります。
④株式の発行法人への譲渡等 完全支配関係がある他の内国法人にみなし配当事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合等における株式等の譲渡対価の額は、譲渡原価の額に相当する金額とされ、譲渡損益は生じないこととされています。
⑤残余財産が確定した場合の繰越欠損金額の引継ぎ 設立又は5年超えの完全支配の関係がある子会社の未処理欠損金がある場合にその親会社が引継ぐこととなります。
➅中小企業向け特例措置の適用 以下に該当する場合、中小企業向けの特例措置(法人税率の軽減措置等)は適用されないこととなります。
①資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上である法人等(以下、「大法人」という。)との間に完全支配関係がある普通法人
②完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されているその普通法人
⑦現物分配 完全支配関係がある他の内国法人に行う現物分配(被現物分配法人に外国法人が存する場合を除く)については移転資産等の全ての譲渡損益課税の繰延べがなされます。
⑧株式の評価損 以下に該当する場合で、完全支配関係がある他の内国法人の株式又は出資については、一定の評価損の額は、損金の額に算入されないこととされています。
①清算中の内国法人
②解散することが見込まれる内国法人
③内国法人で当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの

 

 

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

公認会計士_TATA

大手監査法人で製造業、金融業、小売業、電力業、介護、人材派遣業、の幅広いクライアントの監査に10年以上従事し、中小会計事務所のコンサルタントの経験したのちに、会社を設立。 現在は、各種コンサルタント業務に従事している傍ら、会計・税務に関する情報を発信している。

-税務個別論点