簿記のルールについて
簿記の最終的な目的は貸借対照表及び損益計算書等の作成することです。この貸借対照表及び損益計算書等を作成するためには日々の取引を「仕訳」という簿記のルールに従って記録する必要があります。
この「仕訳」には簿記特有のルールであるため、簿記のルールを理解しないことには簿記を正しく理解するできません。また、簿記は義務教育の過程では出てこない内容ですので、簿記に触れたことのない方にとって簿記のルールはなじみのない内容となります。
しかしながら、簿記のルールの基本である仕訳は、簿記の勉強するうえで避けて通れないものとなります。
逆に言えば、この仕訳ができるようになれば、あとは貸借対照表、損益計算書の作成までを理解すれば基本的には足し算、引き算だけなのでそれほど難しい話ではありません。足し算、引き算であればみなさま、大丈夫かと思います。
ですので少し面倒ですが、まずは簿記のルールである仕訳の記載方法を理解してください。
借方と貸方について
では、以下の例示をもとに具体的な簿記のルールである仕訳を1つずつ見ていくことにしましょう。
例)①会社は、お店で販売するために仕入業者A社からテレビを30,000円で仕入れて、掛取引(お互いにまとめて翌月末等決められた日に支払う約束する取引を掛(かけ)取引という。)としました。
*1:仕訳は右と左分けて記載することになりますが、簿記のルールでは左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」といいます。
この借方と貸方の言葉を意味を考えると、混乱します。
私も簿記の勉強した当初はこの意味を考えてしまい、よく混乱をしていました。
ですので意味を考えずに簿記のルールでは左側を「借方」、右側「貸方」と覚えていただくのが最も簿記の勉強を進めるうえで最効率勉強法だと考えています。
そして、勘定科目は左側の「借方」、右側の「貸方」いずれにも記載されますが、左側が「借方」、右側が「貸方」ということは左右反対に書くことはありません。
このため、左側を「借方」、右側「貸方」というだということだけ覚えておいてもらえれば、大丈夫です。
とはいえ、なぜ簿記のルールでは左側を「借方」、右側を「貸方」というのか意味を知りたいという方もいらっしゃるかと思いますので、以下解説させて頂きます。
結論からいうと、意味はありません。
上記の借方と貸方を分けて記載する方法を複式簿記といいますが、複式簿記は世界共通言語となります。
日本は海外からの取り入れたものとなります。英語では左側を「debit」、右側を「credit」と設定されていました。
福沢諭吉は、「帳合之法」においてdebitのことを「借方」といい、creditのことを「貸方」と訳し、英訳した日本語が広く商慣習の中で使用されることにより、現代においても定着していることが想像されます。
ということで、あまり意味がある言葉ではないので、これについては、深く考えないのというのが最善かと考えています。
よく言われる覚え方として以下のようなものがあります。忘れたときに役立ていただけばと思います。
「借方」と「貸方」をひらがなにすると違いは一文字だけです。
かりかたの「り」が左を向いているので「借方」は左側となり、かしかたの「し」は右を向いているので「貸方」は右側に書きます。
勘定科目について
*2:簿記の勉強が、難しく感じる要素の1つとして、勘定科目があります。簿記の勉強を始めて聞きなれない言葉たくさんあるなかで、勘定科目も覚えないといけないのかとげんなりする方もいらっしゃるかと思います。
私も簿記の勉強を始めた際は、この勘定科目の名前にかなり苦しめられました。
ですので、結論から申し上げますと覚えることを否定するわけではないのですが、覚えなくてもよいと考えています。
むしろ言葉の意味を理解あるいは推測することに努めてください。例えば、上記の仕訳で借方の勘定科目は「仕入」という言葉を使っています。しかし、この勘定科目は「商品仕入」としても間違いではありません。
極端な話、社内における管理に限るのであれば「商品仕入のため勘定」としても、仕訳としては間違いとまではいえません。
すなわち、仕訳における勘定科目は、会社それぞれで自由に決定することができるため、すべて覚えることにあまり意味はありません。
このため、簿記の勉強を進める上では、勘定科目の意味がわかならければ、調べるというぐらいで十分かと思っています。
練習問題を進めるなかで、売掛金、買掛金等、頻繁に出てくる勘定科目を自然に頭に入れていただければと考えております。
極端な話、勘定科目を覚えれなくて簿記の勉強が嫌いになるくらいなら、覚えなくてもいいとさえ思っています。
ですので、あまりここに頭を悩ますのではなく、一見してもわからない勘定科目の意味を調べるくらいで十分だと思います。
なお、本サイトにおいても、勘定科目について1つ1つその内容を解説しますので、出てきたものを単純に覚えるのではなく理解に努めて頂ければと思います。
金額について
*3:それでは、仕訳のうち金額について見ていきましょう。
借方と貸方にそれぞれ30,000円と記載しています。この金額の部分で重要なことは「借方」と「貸方」の合計は必ず一致するということです。
これは絶対です。一致していなければ必ず仕訳が間違っています。例外はありません。
上記の例は、商品を30,000円で全額を掛仕入として行っているため、1行で終わっていますが、仕訳は2行以上になる場合もあります。
例えば、商品を30,000円で仕入、そのうち20,000円を現金で支払い、残額10,000円(=30,000円ー20,000円)を掛仕入とした場合の仕訳は以下の通りです。
上記の通り、借方の「仕入」の金額が30,000円となっているのに対して、貸方は、「買掛金」の10,000円と「現金」の20,000円の合計が30,000円となっており、合計額が一致しています。
このように金額は「借方」と「貸方」の合計は必ず一致することを確認してください。
ちなみに、簿記の試験において問題を読んで仕訳を自分で記載する際には、上表のように記載するのではなく、以下のように記載することが多いと思います。
パターンA
(借方)仕入 30,000 / (貸方)買掛金 30,000
パターンB
仕入 30,000 / 買掛金 30,000
個別勘定科目における仕訳の説明でも記載させて頂いていますが、簿記の勉強は仕訳が基本となりますので慣れるまでは仕訳を記載することをお勧めします。
ちなみに、私が簿記2級や簿記1級を受験したときは、全仕訳をメモとして記載し、1つ1つずつ消し込みをする方法をとって合格しています。
私も当初、直接勘定科目に記載するほうが、効率がいいと思いその方法をとっていたのですが、ケアレスミスが減らないため最終的にやめました。
試験においては難しい問題の得点を取ることが勝負の別れ目となるのではなく、簡単な問題をいかにミスなく落とさないかが勝負の別れ目となります。
このため、少し面倒かと思いますが正確な処理能力がありミスはほとんどしないという方を除き、仕訳をメモする方法をおすすめします。
なお、問題の解き方については、別の機会で詳細に記載したいと考えています。
貸借対照表、損益計算書と仕訳の関係
上述の通り、仕訳は借方と貸方を区分して記載することとなりますが、
上記の仕訳が貸借対照表、損益計算書に反映されることなります。
それでは、貸借対照表、損益計算書と仕訳の関係について以下見てみましょう。
ここは重要なのでおさえてください。
上表の8つのパターンを覚えるのは大変ですよね。
このため、以下4つをまず抑えて頂き、その逆だと減少すると理解していただければ十分です。
なお、下記も覚えるというよりは理解するというものなので、色々な仕訳を通じて理解していただければと思います。
(1)資産勘定借方記載で資産増加
(4)負債勘定貸方記載で負債増加
(5)費用勘定借方記載で費用増加
(7)収益勘定貸方記載で収益増加
上表だけみてもイメージがわきにくいかと思いますので、例示を使って理解して頂ければと思います。
貸借対照表、損益計算書の作成までの流れのうち、必要な各種帳票の説明を省いていますが、仕訳が最終的にどのように、貸借対照表、損益計算書とつながっているのかについて確認してください。
(例)①会社は、お店で販売するために仕入業者A社からテレビを30,000円で仕入れて、掛取引(お互いにまとめて翌月末等決められた日に支払う約束する取引を掛(かけ)取引という。)としました。
②会社は、仕入れたテレビをB得意先へ50,000円で販売し、同額の現金を受け取りました。
上記の他、取引はないものとします。
「①」の仕訳のうち、借方に記載された仕入は、費用の増加に該当します。
「①」の仕訳のうち、貸方に記載された買掛金は、負債の増加に該当します。
「②」の仕訳のうち、借方に記載された現金は、資産の増加に該当します。
「②」の仕訳のうち、貸方に記載された売上は、収益の増加に該当します。
上記のうち具体的な仕訳については、少しずつ理解いただければ結構です。
簿記を勉強するうえで、難しいと感じるポイントして、例えば、仕入が資産、負債、費用、収益がどこに分類されるかという点を悩むかと思います。
ここは1つ1つの勘定科目を確認することによってわかるようになっていくかと思います。
ここでは、一旦そういうものかくらいでも問題ありません。
なお本サイトの個別科目の説明においても、資産は黄色、負債は赤、収益は水色、費用はグレーにて分けていますので、理解の一助にしてください。
少し余談となりますが、上記のうち、注目していただきたいのは損益計算書と貸借対照表のつながりとなります。
利益20,000円が純資産につながっているのがわかるかと思います。
商品の仕入を行ってその商品を販売した結果、利益20,000円が発生していることが損益計算書からわかるかと思います。
そして、当該利益は貸借対照表の純資産に計上されていることがわかるかと思います。
この仕訳から損益計算書、貸借対照表へのつながりを理解していると全体感がつかみやすいと考えていますので、ぜひ抑えてみてください。
まとめ
①簿記のルールでは左側を借方、右側を貸方という
②勘定科目は覚えるのではなく、理解優先
③借方と貸方の合計額は必ず一致
④資産勘定借方記載で資産増加
⑤負債勘定貸方記載で負債増加
⑥費用勘定借方記載で費用増加
⑦収益勘定貸方記載で収益増加
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